4大会連続、かれこれ18年。

昨日、ウズベキスタンとの最終予選、アウェーでの戦いに1−0で勝利したことで、グループでの勝ち点が14となり2位以上が確定した。開始時間がおそかったオーストラリアもカタールに0−0で引き分け。日本に続いて2位以上を確保、本大会出場が決まった。


ウズベキスタン−日本の試合の後ちょっとだけオーストラリアの試合を見たが、引き分けでOKな試合なので特別なことは何一つせず、たんたんとカタールの攻撃を跳ね返すゲームを前半はしていた。後半は見なかったけど結果、0−0の引き分けだからほとんどサッカーなんかしなかったのだろう、オーストラリアは。
日本がホームで対戦したときもそうだったが、確実にアウェーで0−0で引き分けるというサッカー力というのか、サッカーをしない戦いも、ホームで点を取って相手をへこますゲームも出来るオーストラリアは強い。かの国のサッカーに関する総合力は、やはりどうも一本調子というか自分たちのサッカーの理想形にこだわる日本より上のような気がする。

もっとも日本代表は、これしかないというサッカーをして、それでアジアで勝てなければ残念というサッカーをやってきている。
強敵(といってもアジアでのである)に、力の劣る日本が必殺の一芸に磨きをかけ立ち向かう。得意の形をどうつくるか、不利な状況になることをいかにして回避するか、考えることも準備することも半端じゃなかった。つまり、なんとなくだけどこれまでの経緯的に、日本はアジア予選の先にある本大会は眼中になく、目の前のゲーム(この場合試合か)をいかに戦うか、勝ち目が薄いときはどういさぎよく散るかを考えていたように思うし、見るほうも「よくやった、死力を尽くして散ってくれた」だからいいや、ワールドカップなんかいけるわけない。と本気で思っていた。


そういうわけだから、本大会でどう戦うかというより、アジアでいかにして勝つかという目標を追い詰めたのがアメリカ大会アジア予選であり、成し遂げたのがフランス大会アジア第3代表決定戦だったわけである。
良い例ではないけど、今回カタールが日本に対する状況と、20年前の日本が韓国、サウジアラビアなどと対するときほぼ同じだったのである。

10年前からの経験の積み上げで、いまようやく日本代表は本大会をどうやって勝つかというテーマを選ぶ権利を手にして、ひとつ上の次元にいる。
つまり、ちょっと前までの日本代表とは、最終予選までは行くけど、最後のハードルがとてつもないというアジアの小国に過ぎなかった。かつてアジア相手に引き分ける、または勝つためにやってきたことは、いま相手国が必死にやっている状況になり、それが今回サッカーなんか二の次でゲームを勝って終わらせるという戦いをやり遂げることまでできるようになった。

※注として 1986年メキシコ大会からアジアの出場枠は2カ国。本大会の出場枠が16から24に増えためアジアもチャンスを得て盛り上がったが日本代表の苦悩は10年続く。フランス大会以降出場国は32カ国に増え、アジアの出場枠は4+1(1はオセアニア代表とのプレーオフに勝つこと)。出場枠2の時代と4+1の今では予選の戦い自体がかなり意味がことなる。アジアで2位以上ということは決勝(出場決定がかかる試合)まで負けられないというゲームが続くわけだ。


あくまでも経験的な感想だが、前半の前半で得点して1−0の勝利は、強く守備のうまいチームのゲームである。弱いというかゲームがコントロールできない場合、前半で追いつかれる、勢いで2点目をとるが後半2点ないしそれ以上取られて崩壊する。というゲームを何度か日本はしたことがある。本大会でもしている。しかし、この日のゲームはまず守備が先。組織的守備というよりその前に全員が個々に良く守って、組織を崩されないように戦っていた。これは見ていてひじょうーにサッカーっぽいもので、常にできるわけでもない自分たちのサッカーにこだわってぐじゃぐじゃになるより、サッカーとして面白いだろうと思う。
ある意味、本来的なサッカーを見たと思う。まずアウェーで得点する。襲い掛かるする相手を押さえる。反撃の機会を辛抱強くうかがう。審判の不可解なジャッジとも戦う。すべてを冷静に見渡してゲームを勝利で終わらせる。


審判についてだが、ゲーム終盤までは突っかかることもなく、選手たちはしつこい抗議もせずにファールを受けても割とすぐ起き上がっていたし、うまく対処してたと思う。ゲームキャプテンの中沢もまったく抗議してなかったが、おそらくちょっとでも抗議したらカードを出されそうだったので黙ってたのかもしれん。熱くなることも激怒の表情を見せることもなかった。これはやはり強いチームだと思う。
まぁ見ているほうも同じようなもので、まったく興奮することなく「やれやれだなぁ」と見ていた。4分のロスタイムも予想通り、15秒超のおまけ付だったが、終わったときは代表選手に心底ご苦労さんという気持ちでいた。
必死で戦っていた余裕のない時期、たとえばフランスワールドカップ予選のときは、レフリングに対して過剰に反応してたが、実況のアナと解説の山本氏もまったくレフリングについて過剰なコメントはしなかったのも隔世の感がある。


そして自陣ゴールエリア左サイドで長谷部がゲームに関係ないところで相手の8番に肘うちを食らわせてレッドカードの場面。もうロスタイム(記録上は44分らしいが)に入ってるわけで、きた〜と思いましたね。あの位置は左足得意の8番にとってはかなり良い位置。結果入りませんでしたが、危なかったことには間違いない。けど、この日の日本はこんな時間帯で罰を食らうようなミスや行為はまったくしていない。こういうときは不思議と入る分けないと確信しちゃう。それはつまり、それまで淡々としていた日本の選手がここぞとばかり集まり、ゲーム再開を遅らせたことからもうかがい知れる。
そもそもフリーキックの位置を主審は知らないので線審に確認したり反対サイドにいる長谷部にカード出したり、自然と時間が過ぎていく。
長谷部も退場処分だからしつこく抗議のフリをしている。それをなだめようと中村俊輔が審判との間に割って入り、さらに時間を使う。この間、ディフェンスはフリーキックの対処を確認してたわけだ。抗議する長谷部の画面にトゥーリオ、中沢、駒野、遠藤らが映らなかったことからしてそうなんじゃないかと思うわけで。
想像でしかないが楢崎と中沢がゲームの閉め方を徹底してたんじゃなかろうか。


ここまでのゲームが出来た今、多分オーストラリアとは互角になったよーな気がする。
が、しかしこれでも本大会1勝1分け程度の力である。
豪はアジア加盟時点で本大会を考えて予選を戦っており、サッカーといえるようなゲームを意識的にしていない。予選を突破しても特別喜んでもいない豪がホームでの日本戦でどんなサッカーをするか実は楽しみである。
新戦力を加えて攻撃的なサッカーをしてくれたらと思うが、多分ホームでは日本に勝たせないサッカーをすると思う。
高い位置でプレッシャーをかけてボールを奪いアタック、こぼれだまを拾いまくり連続して攻撃する。この日のウズベキスタンをさらに強力にしたような感じだ。そんな状況でパスをまわして攻めていければ、本大会も明るいかも。


それにつけても、12年前。はじめてワールドカップ出場を決めた試合で、勝った直後に中田ヒデがいったこと。
「アジア予選に勝ったくらいで喜んでどうすんの、俺のところに寄って来ないでよ」

当時20歳のヒデはプロキャリア2年目。改めて10年未来の世界から来たヤツだったんだな、と思う。
ようやく、20歳のヒデとぼくらは似たようなことがいえるようになった。というわけだ。