みんなロックで大人になったわけじゃない

NHK・BS-1で今年1月に放送したBBC制作のドキュメンタリー、NHKでの放送のお題が「みんなロックで大人になった」というのが、今週再放送されている。昨日が第1回目「ロックの誕生」、今日第2回目は「アートロック」。この2回は本放送のとき見逃したので、じっくり見ました。


ところで、なぜこんな題をつけなきゃならないのか。「みんなロックでおとなになった」なんて、そういう人・世代もあったかもしれないが、今の20代の人たちは大きくなるのにロックの世話などほとんどなってないだろう。もともとのタイトルは[Seven Ages of Rock]
単にロックの時代を7つに分けてるだけだ。こういう題の付け替えよくないだろう。

また、そもそものタイトルも微妙である。BBCだからイギリスのロックバンド寄り、内容に偏って結構なのだが、現在の若い人からみて、90年代がオルタナティブ、2000年代がインディーズという時代分けはどう思われるだろうか。実際そんなもんなんだろうけど、かなり深刻な変容というかギャップが生じたということだ。

80年代にスタジアム規模の大会場でコンサートをしていたロックってその後はどうなってるの。という疑問に対する答えのようなものはパンクロックの回まで見てるとわかる。
アメリカで成功するということ、これがイギリスの若者が暴力的なまでに繰り広げてきたロック(音楽というより活動みたいなもの)が終わってしまうことを意味していた。


[Seven Ages of Rock]は1960年代から2000年代までの約50年間を全7回でまとめた大長編ドキュメンタリーで、それだけに初めて見る映像もたっぷりで、なるほどこうだったのかと、驚き、おののいたりしている。特にアートロックの回は取り上げているバンドがかなり微妙なセレクトなので、初見の人はわけがわからないかもしれない。そもそもアート・ロックという言い方が死語同然だし、アートロックという音楽のスタイルが作られたわけでもない。
改めて映像で見て、アートロックは音楽のジャンルではなく、まるっきり一連の事件・イベントのようなもんだ。現在、レコードやCDで聴けるけど、それはやはり演奏を記録したに過ぎないものと思わざる得ない。ライブがあってのレコードの時代のようなもんだった。レコードそっくりなライブ演奏がありえない時代ということもできるか。

それにしても当時自ら締め出し放送禁止にしたバンドの映像をBBCは保存していたのだろうか。いつも不思議に思い感心する。
ピンク・フロイドが初っ端に登場し、シド・バレットの姿がたっぷり映し出されたが、これはすごい。YouTubeにアップされているので引用しておこう。


■Seven Ages of Rock / Whith Light Whith Heat ArtRock 1966-1980
Pink Floyd,Syd Barrett

この回、他のバンドも初期状態の貴重かつ奇天烈な映像がたくさん出てくるが、ピンク・フロイドについてのインタビューでロジャー・ウォーターズが登場してることにビックリ。あまりの意外さにデヴィッド・ギルモアが出てたかどうか、思い出せない。
まぁ、それよりなによりシド・バレットのおそらくピンク・フロイド脱退後、短期間ソロ活動したらしいが、そのときの映像か?、そんなのがあるなんて、BBCってすげ〜。


●なお、いつまであるのかわからないけど、2007年制作の番組でもまだ特集ページがBBCのWebサイトにあるので、リンクしておきます。
http://www.bbc.co.uk/music/sevenages/